中米グアテマラの西部に位置する小さな町チチカステナンゴ。その中心にあるサント・トマス教会はマヤの聖典「ポポル・ブフ」が発見された場所として有名です。古代マヤの神話を記したこの書物はマヤ民族にとって神聖なものであり、その発見場所もマヤの人たちは聖地として大切にしています。サント・トマス教会の周辺が祭りのように華やかになるのが市が開かれる木曜日と日曜日です。その日は、教会前の階段に様々な色とデザインの民族衣装を着たマヤの女性たちが並んで腰をおろし、花を売ったり、おしゃべりを楽しんだりします。その熱気と色彩は、めまいがするほど強烈です。
チチカステナンゴは、グアテマラ西部、標高2000m弱の山岳地帯に位置する小さな町です。スペイン風の古い街並みと古代から続くマヤの伝統文化が息づく神秘的な雰囲気が特徴となっていますが、普通の日はグアテマラのどこにでもあるような田舎町にすぎません。
もともとマヤのキチェ族が支配していたチチカステナンゴに、侵略者であるスペイン人がキリスト教布教の拠点として造ったのがサント・トマス教会です。スペイン人はマヤ文字で書かれた古文書をすべて焼き捨ててしまいますが、そんな中で古代マヤの神話をスペイン語に移し替えて保存していた人がいたのです。
1700年代の初め、教会の修道士によってこの書物が発見されました。これが、マヤの神話「ポポル・ブフ(Popol Vuh)」です。これにより、書物の発見場所であるサント・トマス教会は有名になりました。外観はただの小さな教会ですが、内部はカトリックと土着の信仰が混ざった異様な雰囲気になっています。
この日は土曜日で、翌日の日曜市のために、教会前広場は物売りの屋台の準備が進んでいました。