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メキシコには紀元前から15世紀にかけて様々な古代文明が栄え、高度な都市文化の花を咲かせた。それに続くスペイン統治時代には銀鉱山の開発などが盛んに行われ、現在も残る数多くのコロニアル都市を作り上げた。そして、1900年代初頭に世界に先駆けて革命を成し遂げた後は、世界的なレベルの絵画や文学作品、芸術的な建築などを生み出し、文化面で著しい進歩を遂げた。

メキシコシティにはこうした歴史が凝縮されており、ゆっくりと時間をかけて見ていくと、驚きの発見とともに、陽気で親切な人々との触れ合いを含めた多くの体験が可能になる。

 

メキシコシティ中心部の地図

 

ソカロ広場とカテドラル(大聖堂)

まずは、メキシコシティの中心部から散歩を始めよう。

かつて、アステカ帝国の中心地であったこの場所(ソカロ広場)には、かつては数多くのピラミッド神殿が立ち並び、アステカの様々な神々の像が並んでいた。ここにやってきたスペイン人たちは神殿を破壊してその上にキリスト教信仰の中心となるカテドラル(司教座聖堂)であるメトロポリタン大聖堂や、植民地支配の役所などの建築群を作り上げた。

メキシコシティの中心地ソカロ広場に面して立つメトロポリタン大聖堂。アメリカ大陸で最大のキリスト教の聖堂だ。

メキシコの歴史が描かれた国立宮殿

ソカロ(中央広場)の東側に面して建つ国立宮殿。1522年、元々ここにあったアステカ王の宮殿を壊して建設が始まりった。その後、紆余曲折を経て、現在の建物に作り変えられたのは1930年代のこと。この時、メキシコを代表する壁画家のディエゴ・リベラによって、階段の壁面や2階の廊下に、メキシコの歴史を現す壁画が描かれた。内部には、大統領の国務室やベニート・ファレス元大統領の記念室などがあり、無料で入場できる。

国立宮殿の正面。真ん中にあるバルコニーでは、独立記念日(9月15日)に大統領が現れ「メキシコ万歳!独立万歳!」と叫び、集まった群衆がそれに唱和する有名な儀式が行われる。

国立宮殿の階段壁面には、メキシコで最も有名な画家であるディエゴ・リベラが古代からメキシコ革命に至るまでの歴史を凝縮して描いた壁画「メキシコの歴史」がある。絵の中には歴史的に有名な人が大勢いるので、それを探してみるのも面白い。


5月5日通りとその周辺

ソカロと市民の憩いの場であるアラメダ公園を結ぶ華やかな遊歩道が「5月5日通り(Av.5 de Mayo)」。道の両側に商店やカフェなどが立ち並び、休日ともなれば、そぞろ歩きを楽しむ人たちで大変な混雑になる。土産物屋や貴金属店が多いので買い物にも適したところだ。

一方、ソカロの東側に進むと庶民的で混沌とした感じの町になる。メキシコらしい面白さに溢れているが、治安があまりよくない場所なので一人では歩かない方が無難だ。

休日には買い物を楽しむ市民で大賑わいになる5月5日通り。


ソカロの東側は庶民的で混沌とした感じ。メキシコでは骸骨が愛されていて、街角にはこんな人形が立っている。


アステカの大神殿テンプロ・マヨール

メトロポリタン大聖堂の近くの地下で工事を行っていた電力会社の作業員が古代アステカ文明の石を見つけたことをきっかけに発掘された大規模な遺跡がテンプロ・マヨールだ。現在は、テンプロ・マヨールの基盤部を見ることができる。また、発掘によって発見された、アステカの神を彫刻した巨大な石版をはじめとする、様々な遺物も隣接の博物館に展示されている。

テンプロ・マヨールの基盤部が保存されている。後ろの建物はメトロポリタン大聖堂。


テンプロ・マヨール博物館に展示されている骸骨のレリーフが施された壁「ツォンパントリ(Tzompantli)」。アステカで太陽神への生贄にされた人たちを表している。


アステカのエリートとされる鷲の戦士の像。


巨大な劇場・芸術宮殿(Palacio de Bellas Artes)

5月5日通りを西側に歩いて行くとぶつかるのが巨大な劇場、芸術宮殿だ。イタリアの建築家、アダモ・ボアリがデザインし、イタリア産の白大理石をふんだんに使って建設された。主にオペラや民族舞踊などを上演する劇場だ。アール・ヌーヴォー様式の豪華な外観が目を引くが、劇場内部のデザインの斬新さと豪華さも見もの。また、2階から3階の廊下などには、メキシコ壁画の三大巨匠、リベラ、オロスコ、シケイロスの壁画が並んでいて見逃せない。

豪華な外観が目を引く芸術宮殿。


芸術宮殿の数多い壁画の中でも、最も迫力があるのが2階の回廊の壁を埋めるように描かれているシケイロスの作品。特に、独裁から解き放たれた自由の女神といった感じの「ニュー・デモクラシー」は圧巻だ。


市民の憩いの場アラメダ公園

芸術宮殿に隣接して、地元の人たちの憩いの場となっているアラメダ公園がある。平日は静かな場所だが、日曜日には大勢の家族連れがやってきて大賑わいになる。また、公園の周辺にはデパートやショッピングセンター、レストラン、ホテルなども数多くあり観光の中心地という側面もある。また、公園から5分ほどの所には中華街があり、休日は大勢の人たちが食事に訪れる。

日曜日のアラメダ公園の噴水では子供たちが大はしゃぎ。


アラメダ公園近くにある中華街がある。規模は大きくないが、中華レストランが軒を連ねており、休日ともなると食事や買い物を楽しむ大勢の人たちでにぎわう。


メキシコ革命のシンボル革命記念塔

芸術宮殿からアラメダ公園を通って西に進むと革命記念塔にぶつかる。元々、国会議事堂として造られたものだが、メキシコ革命によって建設は中断。革命後に革命記念の塔として完成された。高さは67m。中央にはシースルーのエレベーターがあり、上部の展望回廊に上ることができる。地下は革命博物館になっていて、メキシコ革命の歴史を知ることができる。

建物の一部という感じが残る革命記念塔。


革命記念塔のエレベータ−から見たアラメダ公園方面。塔の上に上るエレベーターはシースルーなので、高度が上がる感じがよく伝わってくる。展望室は57mで、それほど高くはないが、周辺の景色を眺めるには最適。

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広大なチャプルテペック公園

革命記念塔から西へ車で15分ほどのところにあるのがチャプルテペック公園。広大な公園の中には植民地時代に副王の居城として作られたチャプルテペック城、国立人類学博物館、近代美術館、動物園などがあり、休日には多くの市民が押し寄せてお祭りのように賑やかな場所になる。

見所は、何と言っても国立人類学博物館だろう。メキシコを代表する考古学、人類学の博物館で、丁寧に見ていると1日かけても見終わらないほど展示が充実している。

メキシコ国立人類学博物館の正面玄関。アメリカ大陸に人類が定住するころからスペイン人によって滅ばされたアステカ帝国まで、メキシコ各地の古代文化、文明を時代順に展示している。


博物館の展示の中で、最も見ごたえがあるのはアステカ帝国を紹介した「メシーカ室(MEXICA)」。有名な太陽の石(アステカ・カレンダー)をはじめ、アステカの神々を象った石像が所狭しと並べられている。


散歩にお勧めの場所@・サン・アンヘル地区

メキシコ・シティ南西部の高級住宅街として知られるのがサン・アンヘル地区。カルメン広場からサン・ハシント広場にかけて、高級レストランから庶民的なカフェテリア、土産物屋、ブティックなどが軒を連ねている。この周辺は古いコロニアル様式の建物が多く、ヨーロッパ風の情緒ある町並みが楽しめる。日曜日にはサン・ハシント広場で絵画市が開かれ、多くの人で賑わう。

サン・ハシント広場で開かれる日曜日の絵画市。


散歩にお勧めの場所A・コヨアカン地区

サン・アンヘル地区の東に隣接するのがコヨアカン地区。古くからの高級住宅街で、女性画家フリーダ・カーロの家(現在は博物館)など、多くの有名人の家がある。中心となるのは、センテナリオ公園と隣接するサン・ファン・バウティスタ教会で、休日には装飾品や土産物を売る露天が数多く出る。公園の近くには土産物市場もありる。写真のセンテナリオ公園の店ではアイスクリームやトウモロコシなどが売られており、食べ歩きする人が多い。

コヨアカン地区のセンテナリオ公園にはアイスクリームやトウモロコシなどを売る店が多い。


散歩にお勧めの場所B・ポランコ地区

チャプルテペック公園の北側に位置する高級住宅街。リンカーン公園周辺にレストランやカフェ、ブティックが多く、休日はのんびりと食事や買い物を楽しむ人たちでにぎわう。近くには、大規模な高級ショッピングセンターのプラザ・ポランコもある。

リンカーン公園近くのカフェ。


ちょっと変わった場所@・メキシコ電気技術者連盟ビル

メキシコ革命以来、革命の意義や成果を多くの人々に伝えるために壁画を描く運動が始まった。中でも壁画の三大巨匠として知られるのが、リベラ、オロスコ、シケイロスの3人。メキシコシティの様々な場所で三人の壁画が見られるが、特に印象的なのが、シケイロスによる「ブルジョワジーの肖像」という壁画。これは革命記念塔から近い、メキシコ電気技術者連盟のビルの中にあり、誰でも自由に見ることができる。シケイロスらしい迫力のある素晴らしい作品だが、古いビルなので取り壊されてしまわないか心配になる。

メキシコ電気技術者連盟のビルの中の壁に描かれたシケイロスの壁画。


ちょっと変わった場所A・バスコンセロス図書館

「世界でもっとも先鋭的でモダンな図書館」とか「未来の図書館」とか呼ばれているのが、バスコンセロス図書館。大きなビルの内部に巨大な鉄製の書架を積み上げた感じで、「すごい」というより「恐い」という印象が最初に来る。最上階に上って見ると、その恐さが更に強くなる。腰の辺りまでしか柵がないので、夢中で本を探していると、転落してもおかしくない感じ。

未来を感じるバスコンセロス図書館。


ちょっと変わった場所B・国立自治大学キャンパス

メキシコ国立自治大学(UNAM)は、1551年にメキシコ王立大学として創設され、現在の学生数は30万人にも達する、ラテンアメリカで最大規模の大学。キャンパスには芸術作品が多く、例えば中央キャンパスのシンボルとなっている図書館の壁面には、フアン・オゴルマンによる、メキシコの神話や歴史を描いた巨大なモザイク壁画がはめ込まれている。

中央図書館の壁面にはめ込まれている巨大なモザイク壁画。


中央図書館に隣接した大学本部の建物には、メキシコ三大巨匠の一人、ダビド・アルファロ・シケイロスの壁画もある。このほかにもキャンパス内には様々な芸術作品が置かれている。


メキシコ国立自治大学には海外からスペイン語などを学ぶ留学生を受け入れる施設がある。ここの特徴は政治、文学、芸術、演劇、歴史など、スペイン語以外の科目が充実していることだ。授業料さえ払えば誰でも入学できるため、好きな科目を勉強するために通学しているメキシコ人もいる。


ちょっと変わった場所C・グアダルーペ寺院

メキシコシティの中心部から北に車で15分ほどの所に位置するのがキリスト教カトリックの巡礼地として有名なグアダルーペ寺院。その始まりは16世紀。先住民男性ディエゴの前に聖母マリアが現れて奇跡を行ったことによる。カトリックの司祭はこの聖母をグアダルーペと呼び、マリアが現れたテペヤックの丘にグアダルーペの聖母を祀る寺院を建立。奇跡の証として、聖母の絵が浮かび上がったマントが寺院の中に置かれている。

グアダルーペの聖母を祀る寺院。左端の近代的な建物の中に奇跡のマントがある。


褐色の聖母として知られるグアダルーペの聖母信仰がメキシコ全土に広まっていったのには、アステカ時代の女神であるトナンツィンとの混同があったからという説がある。毎年12月にはグアダルーペの祭りが盛大に開かれ、寺院の周辺ではアステカ時代の衣装をまとったグループが音楽に合わせて踊り狂う。


メキシコシティの主要観光地位置図

メキシコシティは地下鉄網が整備されているので、上記で紹介したほとんどの場所は地下鉄で行くことができる。


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