中南米を旅するサイト Latin American Travelers

HOME


メキシコ南部、チアパス州の州都であるトゥストラ・グティエレスの郊外にある町チアパ・デ・コルソでは、毎年1月下旬に「パラ・チコ」と呼ばれる奇祭が開かれる。世界無形文化遺産に指定されているこの祭りは1週間以上続き、仮装した男性や女性、それに女装した男性も加わって、毎日、町中を練り歩く。この祭りを見に、メキシコの中でも独特の文化を有することで知られるチアパス州に行ってみた。

 

チアパ・デ・コルソ周辺図

 

美しい川辺の町チアパ・デ・コルソ

チアパ・デ・コルソはチアパス州の州都であるトゥストラ・グティエレスに隣接している。トゥストラからはローカルバスで20分ほど、観光地として人気の町サンクリストバル・デ・ラス・カサスからは40分くらいかかる。私が行った1月23日は祭りの最終日に当たり、儀式が最も盛り上がるということだった。

チアパ・デ・コルソの町。


川岸のレストランで川魚を食べる

町の前を流れるグリハルバ川の上流には、カニョン・デル・スミデロ国立公園という、900mもある切り立った断崖がある風光明媚な場所がある。チアパ・デ・コルソはここを訪れるボートツアーの出発地になっているため、川辺の船着場にはたくさんの観光用ボートが係留され、岸辺にはメキシコ情緒たっぷりの観光用レストランが軒を連ねている。

川を眺めることができるレストランのテラス席で、川魚(テラピア)の揚げ物を注文してみた。テラピアは、こちらでよく養殖されている小ぶりな鯛に似た魚で、和名をイズミダイなどと言う。癖がなく淡白なので、揚げ物にすると美味しい魚だ。マリンバの生演奏を聞きながら、明るい日差しの元、食事をつまみにビールを飲んでいると、いい気分になってきた。

グリハルバ川の観光用ボート。


レストランで食べた川魚の揚げ物。

世界無形文化遺産に登録された伝統の祭り

祭りの中心行事であるミサが行われるサント・ドミンゴ教会は川の近くにある。周囲では、夕方からのミサに参加する着飾った人の姿が多くなる。女性はスペイン風の色鮮やかな花柄のドレスを着るが、男性は、頭に細い枝を束ねたタワシのような半球状の帽子(金髪を表すようだ)を被り、顔にはスペイン人を模した仮面、身体には鮮やかな横縞模様のマントを纏う。

祭りは「パラチコ」と呼ばれ、世界無形文化遺産にも登録されている。その由来となる物語は、17世紀にマリオ・アングロという女性が子供の病気を治すためにチアパ・デ・コルソにやってきたことから始まる。女性は懸命に看病したものの、子供の病気は一向に良くならず、それを見た周囲の人たちは、子供の病気がよくなるように仮装をして踊った。すると、それを見た子供が微笑み、病気は快方に向かったという。ちなみに、パラチコは「子供のために」という意味だ。

祭りは1週間以上続き、仮装した男性や女性、それに女装した男性も加わって、毎日、町中を練り歩く。そのクライマックスとして行われるのがサント・ドミンゴ教会のミサだ。ここには守護聖人のサン・セバスティアンが祀られており、最後に神輿に載った聖人の行列が行われる。というのは、1月20日はサン・セバスティアンの殉教日で、これは守護聖人の祭りでもある。

ミサが行われるサント・ドミンゴ教会に人々が集まる。


伝統的な祭りの衣装を着た男性と女の子。


教会に集まる大勢の人々

ミサが始まる1時間ほど前になると、教会前の広場は着飾った男女で埋め尽くされ、教会内部にも人が集まり始める。といっても、特段やることもないので、みんな記念写真を撮影したり、ぶらぶら歩いたりしているだけだ。ミサが近づくと、神父が教会の入口に立って入ってくる人たちを迎える。次第に、押し寄せる人波で教会内部は身動きがしにくい状態になって行く。

ミサが近づくと教会前は大賑わいになる


入場者たちを神父が出迎える。祭りの衣装を着た人が多い。


教会の内部。参加者たちで広間が少しずつ埋まっていく。


教会の外では親子連れが祭りを楽しんでいた。


派手な刺繍の衣装を売る店。


最後に熱狂の渦になるミサ

外が薄暗くなってくる頃、教会内部ではミサが始まる。ネギ坊主のようなヘルメット姿の男達で教会内の中心スペースは埋め尽くされ、女性たちは両脇に置かれた椅子に腰掛けて神父の話を聞いている。教会内は押し合いへし合いの満員電車状態だ。

ミサが終わりに近づくと、神父の言葉に合わせて教会の中の男たちが声を上げ、手にした「チンチン」と呼ばれるマラカスのようなガラガラを激しく鳴らす。そして、男たちはみんなで飛んだり跳ねたり、奇声を上げたりの大騒ぎになる。やがて、笛の音に合わせたダンスからガラガラの鳴らし合いになって行く。

この喧騒の中で、ご神体であるサン・セバスチャンの像が神輿に乗って引き出される。この像は、普段は町の世話役の家に安置されているそうで、パラチコの祭りになると像を引き出して街中を練り歩く。そして、ミサの後で新しく世話役になった人の家に置かれるのだそうだ。

ミサが始まるとネギ坊主の男達で教会内は埋め尽くされる。


ミサの最中は教会内は満員状態。一度入ったら外へ出れなくなる。


参加者の熱狂の中サン・セバスティアンの像が引き出される。


着飾った女性たちの姿も楽しい

この祭りはカトリックの聖人であるサン・セバスチャンの祭礼と地方独自の伝統行事が合体したものだが、このように小さな町が一体になって沸き返る祭りは、今ではなかなか見れないだけに、非常に貴重だ。特に、思いっきり派手に着飾って祭りを楽しむ女性たちの姿は見ているだけで楽しい。

女性たちはミサよりおしゃべりが楽しそうだ。


サン・セバスチャン像が教会から出る頃には日が落ちて、グリハルバ川に灯がともる。


TOPへ



HOME
Copyright ©2023 K.Norizuki, All rights reserved.
inserted by FC2 system