プークというのはマヤの建築装飾の様式のひとつで、切石をモザイク状に配置して神の顔や幾何学模様などを浮き上がらせるものです。数多いマヤ遺跡の中でもプーク様式の遺跡はユカタン半島の中心都市メリダの南に多くみられます。このプーク様式の建造物が残る遺跡を一日で回るのがルータ・プークというメリダ発のツアーです。このツアーに参加して、マヤの華麗な装飾を持つ建造物が残る遺跡巡りをしてみました。
メリダの1等バスターミナルから出発するルータ・プークのツアーは、金、土、日に催行されていました。他の旅行社のツアーもあるかもしれないので現地で確認してみてください。ツアーは5つの遺跡を巡るのですが、最近は4つの遺跡とロルトゥン洞窟を回るように変わっているかもしれません。
ツアーはメリダの1等バスターミナルを朝8時に出発。ミニバンを使ったツアーの参加者はヨーロッパの男女7人に、アラブの男性、日本人の男子大学生といった合計10人でした。 車は密林を切り開いて作った直線道路を高速で走り、まずラブナー遺跡を目指します。約2時間でラブナー遺跡に到着。 ここは小さな遺跡ですが、プーク様式の神殿が良く保存されています。写真は「Gran Palacio(大宮殿)」と呼ばれる複雑な構造の建築物です。
マヤの持ち送り式アーチがある建物。建物の周囲の壁は壊れてしまっており、このアーチのある壁だけが残っています。マヤの諸都市ではこのような形のアーチがよく作られましたが、幾何学模様の壁面装飾とアーチがこのように美しく残ったものは他にはありません。まるで凱旋門のような堂々たる風情があり、プーク様式の建造物のシンボル的な存在です。
El Mirador(展望台)と呼ばれる建物。ピラミッドの上に屋根飾りを持つ神殿が乗っている形ですが、下の部分は修復されていないため小山の上に展望台が乗っているように見えます。きちんと修復すれば形の良いピラミッド神殿になると思います。
四角い宮殿の角はチャックの顔を重ねたプーク様式の建築物でおなじみのデザインが用いられています。建物の規模は小さいがこの造形は素晴らしいですね。
最後は、ルータ・プークのメインであるウシュマル遺跡です。ユカタンの遺跡ではチチェン・イツアと並んで規模が大きく見応えのある遺跡ですから、ルータ・プークの他の遺跡よりはるかに観光客が多く、賑やかです。ビジター・センターから遺跡に続く道路を歩いて行くと、正面に巨大な魔法使いのピラミッドが現れます。
マヤのピラミッドの多くは四角錐の形をしていますが、この魔法使いのピラミッドは楕円錐形をしているのが特徴です。四辺の角を丸くした階段状のピラミッドは他にもあるのですが、このように1段が長いスロープ状のピラミッドは非常に珍しいのです。この形状により、姿が優美で、どっしりとした迫力を感じます。以前は、階段を使ってピラミッドの上に登ることができましたが、現在は遺跡保護のために登れなくなっています。
総督の館付近から見た魔法使いのピラミッド(右奥)と尼僧院(左奥)です。ウシュマルは非常に規模が大きく、広範な地域に数多くの建造物が残されています。この遺跡をゆっくり見るにはルータ・プークのツアーでは時間が足りません。この時も、ツアーの同行者たちが、時間がなさすぎると文句を盛んに言っていました。
ルータ・プークツアーは、あまり人がいかない多くの遺跡を一度に見るにはいいのですが、ウシュマルのような規模の大きい遺跡を見るには適していません。メリダのツアーにはウシュマルとカバーを巡るツアーなどもありますから検討してみることをお薦めします。